服部年金企画は、
社会保険労務士会・支部会・ブロック会・自主勉強会等の研修を強化実施しています!!
近時の研修テーマ
・3号被保険者制度は、果たしてホントに不公平なのか?(2時間)
・公的年金制度に不信感を持つ人への対応(2時間又は3時間)
・現実を忘れ跋扈する空理空論の繰下げ論を嘆く!
・在職老齢年金制度の物凄い深わかり!
これまでの社労士会等研修実績
・北海道社労士会県会 ・山形県社労士会県会 ・富山県社労士会 ・茨城県社労士会県会 ・埼玉県社労士会年金部会 ・静岡県社労士会 ・静岡県社労士会沼津支部・群馬県社労士会高崎支部 ・神奈川県社労士会県会及び複数のブロック会(省略) ・東京都社労士会及び多摩支部/武蔵野支部 ・愛知県社労士会 ・京都府社労士会 ・広島県社労士会 ・中国・四国社労士会 ・福岡県社労士会
ご案内
- 講師
- ㈱服部年金企画代表取締役社長・社会保険労務士 伊東勝己
- 研修料
- 各社労士会・支部・ブロック等の予算に応じて応談
- テーマ・研修時間
- 原則ご要望に従う(但し、各テーマ所用時間2時間以上)
- 研修方法
- リアル・配信双方に対応
Q&A
Aさんは障害年金の事後重症請求の添付に必要な診断書の作成が遅れたため4月末までに予約が取れず困っています。予約が取れて請求できるのは5月になってしまい不利になるといわれています。どうしたら良いか教えてください。
郵送による送付をお勧めします。この結論に至る理由を述べます。
Aさんは病状が悪化しているにも拘わらず何故4月への遡及支払いが認められないのでしょうか。
基本権・支分権の概念を駆使することにより鮮明な分析と理解が可能となります。先ず、事後重症の説明をします。事後重症とは本来請求の障害認定日に障害状態に該当せず、その後障害が重くなったときに請求により受給権(以後基本権という)が発生します(国年法30条の2、30条の4②項、厚年法47条の2)。
請求の意思表示により基本権が発生するので「請求年金」といわれます。言い換えますと請求するまでは基本権はありません。請求が遅れますと遅れて請求した5月から基本権が発生します。認定日以降に如何に障害状態が悪化していても請求が無ければ事後重症の基本権は存在しません。
従って、5月請求以前の4月分の遡及支給はなく1ヵ月分の権利を失います。この点で認定日に障害状態にあれば請求しなくても当然に基本権が発生する本来請求と異なります。国年法30条・厚年法47条の法文は障害状態にあれば「支給する」と断言しているからです。何故、当然に請求なくして基本権はあるのでしょうか。
その理由は「防貧を制度目的」とする社会保障の本質が基底にあるからです。「支給できる」の任意では保障の確証は得られません。老齢年金も「年齢到達」(国年法26条・厚年法42条)により、遺族年金も「死亡時」に「支給する」(国年法37条・厚年法58条①項)と断言しています。
注意すべきは、基本権は上記理由により当然に有っても請求がなければ支分権は発生せず、年金の支給はありません。わが国の年金法は基本権があれば支分権も当然生ずる職権主義でなく、請求者の意思を尊重する請求権主義を採るからです。以上の流れを理解することで事後重症の「請求年金」の意味がスッキリと浮かび上がります。
・さて、Aさんが請求すると請求翌月より支分権が発生します。(国年法18条①項厚年法36条①項)。この結果、Aさんは4月に予約が取れず請求ができないので、5月請求となり、その翌月である6月から支給されることになります。しかし、予約がとれないという保険者側の都合でAさんの権利を奪うことは常識的に許容できるものではありません。
そこで登場するのが「到達主義」適用による解決です。Aさんは郵送による送付で4月内到達していれば4月内受付として扱う考え方です。「到達主義」の下では到達日が基準となるからです。「到達主義」とは、到達は、意思表示を記した書面が相手方の郵便受けやその家族、使用人の手もとに到着すれば足り、相手方がそれを読むなどして内容を理解する「了知」することは要しないとする取引関係重視の民法の考え方です。
行政手続法でも「到達主義」を取り入れています。①簡易書留或いは②レターパックプラス等なら一両日中には到着し受領印を得られます。①又は②の表記に「〇〇様年金請求書在中」と記せば内容証明郵便を別便で送る手間を省けます。普通郵便は避けるべきと考えます。
Aさん(65歳・独身)は35年勤めた会社をリストラされ公園で生活するホームレスである。街頭年金相談会で老齢年金の受給資格あることが判明した。年金の請求ができるか。
仮住所制度(民法24条)を活用すれば請求できる。
国年法施行規則16条1号、厚年法施行規則30条1号には請求書には住所要件が記載されている。何故、要件を欠くのに請求をできるのか。
住所は、受給権発生要件でないからである。受給資格を定める国年法26条、厚年法42条には年齢要件、加入期間のみ記載され住所要件はない。受給資格に住所要件を加えることは、下位規範の施行規則で要件を加重することになり法適用のルール上(法段階論)できない。規則の住所要件は年金証書や行政からの通知等が届くための事務処理上の必要性に基づくものである。
規則の住所要件には民法の住所制度が適用になる。年金請求先は行政機関なのに私人間を規律する民法の住所制度が適用される理由は何か。年金請求は、行政機関への金銭の請求であり法律関係は売買の代金の請求と同じ取引関係である。売主も年金受給権者も同じ債権者であり、買主や支給義務者の政府である債務者は対等な債権債務関係で上下関係に立たたない。受給資格の確認や裁定の様に政府が権力的に行う関係ではない。この結果、対等な者の取引関係を規律する民法が適用される。
民法は住所制度として住所(22条)・居所(23条)・仮住所(24条)を設ける。住所は各人の生活の本拠である。実際の生活の拠点でなければ本拠にならない。居所は住所が知れない場合に、居所を住所とみなす制度である。一時帰国者・自宅へ戻れない長期出張者や避難者などが、継続して居住しているものの「生活の本拠」というほど結び付きが強くない滞在地をいう。Aさんには住所、居所とも適用されない。
そこでAさんには残された仮住所を適用できるか検討する。ある行為について仮住所を選定したときは、その行為に関しては、その仮住所を住所とみなされる。年金請求は「ある行為」に該当し、仮住所制度を適用できる。仮住所は意思表示で任意に選定でき、その場所がその人の日常生活の本拠であること要せずAさんも活用できる。市区長村役場の生活保護課、ホームレス自立支援センター、交番等が実務上の例である。また住所とみなされる結果、規則の住所要件も具備することになる。
年金の受取は、仮住所に毎回の支払期日前に送付されてくる年金送金通知書の受領証欄に押印し、年金証書と一緒に年金送金通知書に記載された郵便局に運転免許証やマイナンバーカード等の本人確認書類を持参して現金を受取ることになる。
尤も、仮住所が法的に住所とみなされるとはいえ不安定であることは否定できない。ホームレス自立支援援センター等に居住して住民登録し、金融機関の口座を作ることが理想である。唯、これに拘泥せず仮住所からの請求権行使を可及的速やかに認め、生活保障を確立することこそ最重要課題と考える。