質問が多い厚生年金と雇用保険の関係 ~支給調整は65歳までを活かす方法~ 2024.10.10
老齢厚生年金と退職後の雇用保険
1.厚生年金と雇用保険の調整は65歳まで
定年退職後、65歳まで再雇用で働く人が多くなり、厚生年金と雇用保険の関係性についてお客さまの関心が高くなっています。
よく質問をいただくのは、「うちの会社は65歳誕生日(誕生月の月末)で雇用契約が満了します。先輩に聞きましたが、
65歳少し前に退職すると、厚生年金と雇用保険が調整されず、マルマルもらえるみたいですね。
このことについて具体的に教えてほしいです」という内容です。
最近のお客さまは制度を有利に活用しようと、年金相談会に来所される前から、 職場の先輩やYouTubeで情報を収集しています。
さて、ここで用語の確認をしておきましょう。
65歳までの「特別支給の老齢厚生年金」と、雇用保険(正確には「基本手当」と言いますが、
このコラム中はお客さまに対する理解しやすい用語として、以後「雇用保険」と記載します)は同時に受給することはできません。
会社を退職し、働く意思と能力のある人が、雇用保険を受給するために、住所地のハローワークに求職の申込をした場合、
雇用保険の支給が終わるまで、金額の多い、少ないではなく、「特別支給の老齢厚生年金」は全額支給停止となります。
厚生年金加入44年以上の長期特例に該当しない場合、大抵は厚生年金より雇用保険のほうが金額は多くなります。
また、65歳までの「特別支給の老齢厚生年金」は1月から12月までの年金額が108万円を超えると課税対象になりますが
雇用保険は非課税なのでこの点も注意が必要です。
なお、雇用保険は加入年数で受給できる日数が異なりますが、20年以上加入で定年や自己都合の場合、給付日数は
賃金日額の150日分となります。
65歳を過ぎて退職の場合、1年以上加入で賃金日額50日分の一時金が支給されます。
2.65歳誕生月が雇用契約満了の場合
継続雇用で、雇用保険に20年以上加してる、今年65歳の昭和34年12月20日生まれの人で考えてみましょう。
令和6年12月19日以降の退職の場合、雇用保険は50日分の一時金です。一時金と厚生年金の調整はありません。
一方、令和6年12月18日までの退職で、65歳になってからハローワークに求職の申込をすると、退職が65歳前であるため
雇用保険は150日分受給できます。しかも、65歳を過ぎることで、特別支給の老齢厚生年金ではなくなるので、
雇用保険と両方受給することができるようになります。
ただし、誕生日の2日前は会社も嫌がりますので、誕生月月末や給与締め切り日の退職をおすすめしています。
自己都合退職の場合、2か月の給付制限期間があるので説明しておくとよいでしょう。
もちろん、65歳以降も働ける会社であれば、無理にこの方法を使うことはありません。
また、退職金等に影響がないか確認しましょう。
社労士紹介
講師紹介
農林系金融機関にて12年間、窓口職員指導、年金推進業務に携わる。
年金相談はお客様を笑顔にし、感謝されることにより、自信を持った職員へと劇的に生まれ変わる瞬間に何度も立ち会う。
平成13年度独立開業。以後、JAをはじめ金融機関の年金相談、年金研修、年金事務所の窓口相談を主な業務に活動中。
研修受講者延べ10万人超、相談者約3万人超の経験から、推進話法を組み合わせた研修に定評がある。
㈱服部年金企画宇都宮、高崎教室主任講師。